日本公益学会設立趣意書

日本公益学会は、慶應義塾大学経済学部教授・小松隆二を発起人代表として、
さまざまな分野の研究者を結集して発足した学会で、人文、社会、自然科学といった
既成学問の枠にとらわれることなく、自由かつ柔軟に非営利の公益や公益活動について
総合的に研究することを目的としている。
平成12年4月、発起人において学会設立趣意書を作成し、参加者をつのり、
同年5月日本公益学会を設立した。日本公益学会設立趣意書を以下に掲げる。

日本公益学会設立趣意書   平成12年 4月

今度日本公益学会の設立を目的に発起人一同活動を開始致しておりますが、広く諸先生各位にその趣旨を御説明し、御指導・御参加をいただきたくお願い申し上げる次第です。

21世紀を迎えようとしている今、公益という考え方をめぐって大きな変化が進行しつつあります。NPO法や介護保険法の制定・実施にまつまでもなく、社会貢献的活動に関わる福祉、ボランティア、ジェンダーなどの領域では、非営利の活動や研究が日常的なものとなりつつあります。公益と反対の極にあるように理解される企業においても、営利活動のみに専念できる時代ではなくなっています。企業内でのボランティア活動、リサイクル活動、安全、環境保護など社会貢献的な部課の設置が一般化し、これら非営利の活動が企業活動の重要な一端を占めるまでになっています。また、科学技術をめぐっても、職場・食品・薬品などの安全管理、自然・環境保護、ごみ処理、医療など公益に相応しい活動の重要性が増し、社会科学や人文科学のみならず、むしろ医・理・工系の自然科学こそ、公益について考えねばならなくなっています。

このように、公益をめぐる積極的な意義があらゆる分野で目に見える時代に入ってきましたが、人文、社会、自然科学の人々が共通に討議する場がありません。それだけに、これまでには考えられなかった広範な分野を結集して一つの学会の創設が必要になっています。もっとも、学会を設立するとなると、公益の定義化などが必要と考える方もおられると思いますが、私どもは、むしろ定義化することで、公益学の理解や広がりが狭隘化することを恐れています。社会貢献的な考え、公益をめぐる思想、活動、組織、経営、法則などを社会のさまざまな活動と広く結びつけて考え、これらを一つの学問体系として研究対象とする必要性を感じています。

すでに環境、安全、公益法人、社会福祉、NPO、社会教育、企業倫理、ジェンダーなどそれぞれの領域で多数の学会が成立しています。しかしながら個々の領域を超える横断的な研究とその理論化、それらを包括したり、総合したりする複合的な学会や活動はこれまではみられません。

従って、本学会は人文、社会、自然科学といった枠にはとらわれず、自由に、柔軟に非営利の公益・公益活動を総合的に研究することをめざしています。先生方には以上の趣旨をよくご理解いただき、学会に御参加・御支援を賜ることができれば幸いでございます。

発起人
伊藤眞知子(国立婦人教育会館)
梅津光弘(慶應義塾大学)
大島美恵子(国立国際医療センター)
大島泰郎(東京薬科大学)
大森真紀(早稲田大学)
川口善行(NGO活動推進センター)
小松隆二(慶應義塾大学)
斎藤達雄(共同通信社)
高橋英彦(社団法人 日本・豪・ニュージーランド協会)
長島 昭(慶應義塾大学)
西村万里子(明治学院大学)
福井 武(アジアの森林を考える会)
原田克弘(山形県企業振興公社)
星 元紀(慶應義塾大学)
間瀬啓允(慶應義塾大学)
水野左敏(国立感染症研究所)
山本 啓(金沢大学)          (五十音順

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